大河ドラマ「光る君へ」で再注目!「枕草子」を読もう!

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この一冊

本ブログでは、これまでに、2024年大河ドラマ「光る君へ」をご紹介しています。

このドラマを機に平安時代への関心が一気に高まっています。
そして、主人公、紫式部だけでなく、同時代のライバル、清少納言にも注目が集まっています。

考えてみれば、紫式部と清少納言という日本が世界に誇る文豪ともいえる二人が同時代を生きていたことは、まさに奇跡です。

前に、「紫式部日記」についてご紹介しました。

そこで、今回は、清少納言の「枕草子」をご紹介します。

枕草子とは

平安時代中期、清少納言は、中宮である定子に女房としてお仕えしていました。
定子の周りには優れた女性たちが女房として集められていました。定子は清少納言より10歳ほど年下ですが、自身も教養深く、定子の後宮には、その洗練された空気にあこがれた青年貴族たちが集まり、サロンとなっていました。女房には華やかなサロンの一員として文化を作ることが求められました。
それらの日々の中で、定子を中心とした人々と、清少納言自身の感性を書き綴ったものが「枕草子」です。

ただし、「枕草子」原文にいきなり挑戦するには敷居が高いという方のために、入門書をご紹介いたします。

枕草子 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典  角川書店 (編)以下本書といいます。」です。

枕草子 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

本書の特徴は以下の通りです。

「源氏物語」とともに王朝女流文学を代表する「枕草子」。条天皇の中宮定子の後宮を中心に、彼女を取り巻く華やかな平安の宮廷生活での体験を、清少納言の優れた感性と機知に富んだ簡潔な文章で、生き生きと綴った珠玉の随筆集。古文現代語訳ともふりがな付きだから、朗読にも便利で、古文でも現代語訳でも楽しむことができる。古典初心者に贈る最適な文庫本。装束などの役立つ図版も豊富に収載。

Amazonの本書の紹介ページ

ちなみに本書は、2024年6月29日現在、Amazonの「古代・中世文学の日記・随筆の売れ筋ランキング」で第1位となっています。

枕草子には、大河ドラマ「光る君へ」をご覧の方ならご存知のエピソードもたくさん出てきます。

本書から少し、ご紹介します。

高欄のもとに、青き瓶の大なるを据ゑて、櫻のいみじうおもしろき枝の五尺ばかりなるを、いと多くさしたれば、高欄の外まで咲きこぼれたる昼つ方、大納言殿、櫻の直衣の少しなよらかなるに、濃き紫の固紋の指貫、白き御衣ども、上には濃き綾のいとあざやかなるを出して參り給へるに、上の、こなたにおはしませば、戸口の前なる細き板敷きに居給ひて、ものなど申し給ふ。

 御簾の内に、女房、櫻の唐衣どもくつろかに脱ぎ垂れて、藤、山吹などいろいろ好ましうて、あまた、小半蔀の御簾より押し出でたるほど、昼の御座の方には、御膳参る足音高し。警ひちなど、をしといふ聲聞こゆるも、うらうらとのどかなる日の気色など、いみじうをかしきに、果ての御盤取りたる藏人參りて、御膳奏すれば、中の戸より渡らせ給ふ。

  (枕草子第20段より抜粋)

この場面では、清涼殿の縁側の手すりの近くに青磁の瓶の大きいものを置いてサクラのみごとな枝がたくさん活けてあるさまから始まり、大納言(中宮の兄、藤原伊周)の華やかな衣装を紹介しています。

また、女房たちのセンスのいい衣装が御簾の下からごぼれ出ています。

ちょうど、お昼になり、お膳を運ぶ蔵人の足音が響く、うららかでのでかですてきな春の日です。
そして、食事の用意ができたと申し上げるので、帝(一条天皇)がおいでになります。

このとき、中宮定子は19歳、伊周21歳、二人の父は、時の権力者、藤原道隆(道長の長兄)です。
また、一条天皇は15歳で、中宮の才気を愛し、父道隆の地位はますます揺るぎなく、子の伊周は堂々たる貴公子ぶりです。
女性は人前に出ない時代のこと、袖口だけ華やかに御簾の下から見せています。
清少納言にとって、忘れられない素晴らしい宮仕えの一コマです。

しかし、わずか1年あまり後、道隆は急死、伊周も花山天皇に矢を射かける事件に関わって、太宰府に流罪となってしまいます。中宮の不幸もここから始まりますが、「枕草子」には現実の影の部分は描かれません。中宮様のまわりは、いつも春爛漫なのです。

大河ドラマでの清少納言(ファーストサマーウイカ)と中宮定子(高畑 充希)、そして、藤原伊周(三浦 翔平)の様子が目に浮かぶようです。

また、第5段では、お産のため中宮が、平生昌なりまさの屋敷にお移りになったときのエピソードが書かれてあります。

お産のとき、普通は実家に帰りますが、このとき中宮の実家はもうなかったのです。
父道隆は急死しており、兄伊周は失脚、そのうえ、お屋敷は火事で焼失しています。
それで、身分の低い生昌の屋敷に移るしかなかったのです。

ここで、清少納言は生昌をやり込めます。やり込められた生昌は、彼女の才気に魅かれたのか、その夜、彼女の寝所に忍び込みます。
ところが、入口で「入ってもよろしいでしょうか。」と何度も聞くので、月明かりに照らされて丸見えになり、そばで寝ていた女房たちに笑われて退散するはめになってしまいます。

入りたいならいきなり入ればいいものを、聞かれて「いいです」なんて答える女がどこにあろうか、と彼女の筆は厳しいです。

実はこの生昌は、流罪になった伊周が都に潜入したのを密告していたのです。
このような背景から辛辣な筆致となったと言われています。

ドラマの今後の展開がますます楽しみですが、併せて、枕草子を読んでみてはいかがでしょうか。

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