どんなおはなし?
シングルマザーの沙織(安藤サクラ)は小学5年生の息子の湊と、貧しいながらも楽しく暮らしていた。
ある日湊が「豚の脳を移植された人間は、豚なのか人間なのか」という不可解な質問をする。
沙織は違和感を覚えながらも、軽く受け流していたが、その日を境に異常な行動が見られるようになる湊。
いじめが原因と思った沙織は、学校へ出向き校長や担任と話すも、全く話が通じない・・・
果たして息子の身に何が起こっているのか・・・。
スタッフとキャストについて
この映画は人気作家、坂元裕二さんのオリジナル脚本で、色々な人物の視点から繰り返し語られる「事の真相」が絶妙なバランスで描かれており、カンヌ映画祭では脚本賞を受賞している作品です。
監督は是枝裕和監督、プロデューサーにはヒットメイカーの川村元気さんという磐石の構え。
しかも、音楽はこれが遺作となった坂本龍一さんが担当されています。
キャスティングでは、キーとなる2人の少年がとんでもなく美形!!
是枝監督って、いつもどこでこんな原石を見つけてくるんだろう、と思いますよね。
2人とも女の子と見間違うほどの美貌でした。
周りを固めるのは、安藤さくらさん、永山瑛太さん、そしてなんといっても田中裕子さんが素晴らしい!
田中さんの演じるのは小学校の校長先生ですが、打てども打てども全く響かない、暖簾のような校長の心に、安藤さくらさん演じる沙織がイラつくシーンがありますが、とにかくその存在感がすごいんです。
子供たちのフレッシュな演技も素晴らしいですが、この大人たちの円熟した演技も見どころとなっています。
多方面から展開する脚本
作中に沙織と湊がドッキリ番組をテレビで見ていて「こんなの嘘ってすぐわかりそうなのにね」と沙織が言うと「その場にいるとわからないんだよ」と湊が答えるシーンがあります。
これがこの映画の「肝」だと思っていて、最初は沙織目線で物語が進むので、見ているこちらも「なんて学校だ!こんな担任は辞めさせるべき!」と思ってるんですが、次は問題の担任の先生目線で進むと「あれ、良い先生だったん?」とまるっきり感じ方が違うんです。
目線を変えると誰が「怪物」と思えるのか変わってきて、恐ろしいと思いました。
こうした思い違いが普段の日常にもたくさんあるような気がして・・・
もちろん、子供たち目線の場面もあって、多角的に見ることによって、偏った見方ではなく、フラットに物事が把握できるようになっている素晴らしい脚本でした。
どことなく感じる「銀河鉄道の夜」感
山に廃棄された電車を、湊と友人の依里が基地にしていて、そこではありのままの2人で楽しく遊んでいる姿が印象的でした。そしてラストシーンではなぜか宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせるような切なさが胸を締め付けました。カムパネルラとジョバンニのような・・・
ラストシーンに関しては、2人はどうなったのか明言されていません。
余韻を残す映画でした。
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