どんなおはなし?
とあるフランスの山荘。飼い犬のスヌープと散歩から戻った弱視の少年ダニエルは、家のまえで父親が血を流して倒れているのを発見する。
息子の叫び声で母親のサンドラもそれに気づき絶句する。
警察ではこの不審死を、3階の窓からの事故死、自殺、殺人と考え、中でも妻のサンドラと夫との問題を取り上げ殺人の可能性を高めていた。
数々の証言や証拠品をもとに、この家庭での問題が浮き彫りになっていき、濃厚な法廷劇が繰り広げられる。
果たして真実とは・・・
カンヌ映画祭パルムドール受賞作
この映画で監督と脚本を務めたジュスティーヌ・トリエは、パルムドールを受賞し、アカデミー賞でも脚本賞を受賞しました!
152分という長い映画をほぼほぼ会話で引っ張っていく脚本の凄さは感服!両賞に相応しかったと思います。
また、スヌープというめちゃくちゃ可愛いワンコが登場して、ラストまで存在感を見せつけますが、その役を演じたメッシくんはパルム・ドッグ賞(そんな賞あったんだ・・笑)を見事受賞しています!途中、このシーン大丈夫?という動物愛護団体に指摘されないか心配なシーンもありますが、安全に配慮して制作されている・・とのことです。ほんとかな?ちょっと可哀想なシーンでした・・・
主役のザンドラ・ヒュラーがすごい
この映画、とにかく主役のザンドラ・ヒュラーがすごい映画です。
夫殺しを疑われて(実際のところは謎です)常に針のむしろ状態。第一発見者である息子にも最終弁論前に「母親とは別で生活したい」という態度を取られてしまいます。そんな苦悩で気丈な中ふと見せる弱さや、夫婦で激しい口論になった時の演技などは本当に素晴らしいものでした。
彼女はこの年のカンヌではグランプリに輝いた『関心領域』にも出演しており、出演作が2作も受賞するというラッキー女優となりました。まさに時の人!
少年が母親を越した時(ネタバレ含みます!)
法廷での証言から、この家庭では夫が息子の世話をより多く見ていて、母親との関係のほうが希薄に見えました。
そのことで、この事件の重要な証人である息子のダニエルは判断に激しく悩みます。
そんな中、裁判の間ダニエルの世話人として派遣されていた女性が、悩むダニエルに諭します。
「何かを判断するのに材料が足りないと判断のしようがない。だから決めるしかない。たとえ疑いがあっても一方に決めるのよ。判断しかねる選択肢が2つある場合一つを選ばないと。」
「無理にでもってこと?」
「そうよ、ある意味では」
「確信したふりを?」
「違う。心を決めるの。ふりじゃない。」
そして自分の心を決めたダニエルは、堂々と法的で証言します。
「何かが起きて、その原因がわからない場合は裁判と同じで状況から考える。証拠をさがしてもわからないならなぜなのか、自分で考える必要があります。」
真っ直ぐに前を向き、堂々と語るダニエルには説得力があり、裁判官をも圧倒します。
そうしてある意味、母親を救った少年は、最後のハグでは母親を上から抱きしめ、庇護されるものから庇護するものへ成長を遂げたような気がしました。少年はこの母親を守り生きていく心を決めたのだと思いました。
そして、ラストシーンではスヌープがサンドラのもとにやってきて一緒に眠るシーンがあり、今までそんな関わりわ描かれていなかったので違和感を覚えます。
庇護対象が母親に変わった気がするシーンです。
これまでの証言から、夫婦間には色々あり、一概にどちらのせいとも言えませんが、サンドラも夫公認の元で浮気をしたりと結構奔放な生活を送っていました。小説家として成功しているサンドラは、同じく小説家として成功したいけれど中々芽が出ない夫より立場が上だったと言えます。会話の節々で夫を下に見るような発言もありました。
そうした力関係はこの事件で息子に守られるものとなった・・・ラストシーンはなんとも言えません。
結果、事件の真相はわかりませんが、皆さんはどちらだと思いますか?
私は、夫の自殺だと思いますが、それによってサンドラは家族で一番弱いものになったのだと思いました。
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