どんなおはなし?
太宰の傑作『人間失格』が生まれて、入水自殺をするまでの3年間の、破滅的な生活を、太宰と関わった3人の女性とのエピソードと共に描いていく。
2人の子供と、身重の美しい妻美知子(宮澤りえ)がいながら、文才のある静子(沢尻エリカ)や、いじらしい未亡人の富江(二階堂ふみ)と関係を持つ文豪・太宰治(小栗旬)。
美知子をモデルとしたと言われる『ヴィヨンの妻』や、静子にインスピレーションを受けたとされる『斜陽』などが大ヒットし、人気作家として名を馳せるが、深酒とタバコの習慣で、肺を蝕まれ喀血するようになる。
家庭のこと、女のこと、批評のこと、金のこと、病のこと、、、
飄々としながらも、心にはいつも「死」の文字が浮かんでいた・・・
蜷川実花監督の最高傑作
『ヘルタースケルター』『さくらん』など、美しい色彩の蜷川実花ワールド満載だった作品と違い、今作は控えめだった印象。
そのことについて、蜷川監督はこう語られています。
「手持ちの武器が少ない状態」で臨んだ本作。「ビジュアルだけに目がいかないようにしたい、一番の得意技をフルに使わない」という挑戦をした。
もちろん、華やかな印象のある静子のシーンではピンクや赤といったこれぞ蜷川実花ワールド!という色調が使われていますが、全体としてはかなり抑え目です。
でも、例えば太宰が雪の中倒れるシーンでは、喀血して赤く染まった雪の上に落ちる雪が、白い花となって降り注ぎ、それはそれは美しく印象に残ります。
7年の構想ののちの映画化、ということで、監督自身の脚本も相当面白かったし、俳優さんたちの演技も素晴らしすぎて、大傑作になったんじゃないかと思います。
俳優がすごい
陽キャな印象のある小栗旬さんが太宰役?ということでどうなんだろう。。。と思いましたが、素晴らしかったです。
まあ、まず絵的に太宰っぽいですし、特に後半の表情なんかは、本に載っている太宰の顔とダブって見えてシンクロしました。
女子たちに「可愛いな〜〜」って言うのもなんか好きです笑
後半、追い詰められて狂気じみてくる表情なんかは、今まで見たことのない小栗旬の表情で、聴き迫るものを感じます。
そして、正妻美知子役の宮澤りえさんがすごい!
(このポスター好きすぎる)
蜷川実花さん曰く、「この役を宮澤りえさんにしたことで、説得力が出た」とのこと。
私の一番お気に入りのシーンは、妹の葬式の後、家に帰ってきたら、綺麗に掃除されていて花まで生けてある。そして愛人が家に入ったのだと気づき泣いてしまうシーン!気丈にしていた美知子ですが、ここで何かが崩れ落ちる・・・という本当に素晴らしい演技でした。ラストの洗濯のシーンも好きです。
静子を演じる沢尻エリカさんも溌剌と自信に満ちた女性像を、
最後の女富江を演じた二階堂ふみさんの超メンヘラ女も、本当に素晴らしかったです!
監督曰く
男女の人を想う気持ちって時代が変わっても変わることはなくて、今を生きる私たちと地続きだと思うんです。映画では極端なキャラクターになっていますが、誰にも思い当たるような感情を細かく作っています。見る人にとっての自分たちの物語になっていったらいいですね
とのこと。また太宰治に関しては
中途半端に人間くさいので、自分でやったことに対しても傷つくんですよね。その部分をどう、人間的に共感してもらえるように描くかが生命線で難しかった。
とおっしゃっています。
読んでみよう!太宰治の小説3選
『桜桃』
以前ブログでも紹介しています。
ちょうどこの映画の時期の太宰が書いた短編で、夫婦喧嘩をしてやけ酒を飲みに出た先で、桜桃(さくらんぼ)が出たのを苦々しく食べるというお話。子供や妻に対する太宰の考えが読み取れます。
映画にもさくらんぼが出てきましたね。
『ヴィヨンの妻』
妻の美知子がモデルと言われる小説。
夫の行きつけの飲み屋での借金を返す当てがなく、妻がこの店で働くようになるお話。
この映画の中では「ヴィヨンの妻、読みましたよ!作家の妻の鏡ですね!」と話題になっていましたね。
『斜陽』
敗戦後の没落貴族と作家らの生き様を描いた小説。
この映画の中でも、飛ぶように『斜陽』が売れていくシーンがありました。斜陽族という流行語まで生み出し大ベストセラーとなった本ですが、愛人である静子の日記から「恋と革命によって生きる」と盗用しているようです。
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