どんなおはなし？
犬が大嫌いな男が、ある日犬を飼うことになってしまう。
男は「醜い」と思っているその犬にポチと名をつけ、しょうがなく世話をする。
そうしているうち、引っ越しが決まりその犬を置いていくことを決意するのだが・・・
太宰って面白いんだ！と思える作品
まず、冒頭の文が最高です。
「私は、犬に就いては自信がある。いつの日か、必ず食いつかれるであろうと言う自信である。」
犬について自信があると言うので、知識がすごいのかと思いきや、食いつかれるという自信！笑
この後もとにかく犬をディスりまくります。
友人が噛みつかれる時の描写も最高で、
「友人は何もせず、その犬のそばを通った。犬はその時、いやな横目を使ったという。何事もなく通り過ぎた、とたん、わんと言って右の足に食いついたという。災難である。一瞬のことである。友人は、茫然自失したと言う。」
いやな横目・・・笑
この表現、最高ですよね！
わんと言って・・・
わんがひらがなでなんかかわいい笑
こんな風に、犬に恐怖をおぼえていて大嫌いな主人公ですが、どうにか噛まれない素振りを研究して実践するうちに、今度はなんと犬に好かれてしまう！という展開！笑
そんなこんなで、胴長で醜い犬（多分ダックスフンドっぽい描写。かわいいダックスですが当時は珍しくて醜いと思っていたのかも）を、イヤイヤ飼うことになり、ポチと名付け、されども距離を持って世話する主人公。
この主人公とポチのやり取りも最高です。
「僕はお前を好いてはいないんだ」少し、ポチにもわかるらしいのである。そう言われると多少しょげる。
ちょっと躊躇し、私の顔色をそっと伺った。
「やれ！赤毛は卑怯だ！思う存分やれ！」
赦しが出たのでポチは、ぶるんと一つ大きく胴震いして、弾丸の如く赤犬の懐に飛び込んだ。
喧嘩っ早いポチに喧嘩するなと諌めた主人公ですが、終盤は卑怯な赤犬にポチをけしかけ、見事ポチが追い払うと褒めちぎります。笑
ラストは少しヒヤヒヤする展開ですが、読後感が素晴らしいですし、面白くて大満足のお話です。
２４ページほどと短めですし、青空文庫で無料で読めますので、スキマ時間にもぜひ読んでみてくださいね！
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