天才と紙一重の狂気「TAR」

スポンサーリンク
ドラマ

どんなおはなし?

ベルリンフィルの主席指揮者のリディア・ターケイト・ブランシェット)は、ウィットに富み知的で、才能あふれる女性。誰もが認める実力で、今はマーラー交響曲第五番という大作のレコーディングを控えています。

全ての栄光を手にしたターですが、彼女の裏の顔は、嫉妬によって教え子を貶めたり、自分の好みの生徒を贔屓したり決して模範となるような人物ではありませんでした。

そのことが、元生徒の死によって明るみとなり、窮地に陥いったターは、精神が崩壊していきます・・・

ケイト・ブランシェットの神がかった演技

とにかくケイトが素晴らしかったです!ターという女性は、とにかく音楽第一で人生を捧げるほど情熱を傾けていますが、彼女の多くの会話シーンではその想いがとても感じられます。

しかし、権力者の立場にいることで威圧的な態度を取り、部下をぞんざいに扱ったり、嫉妬から生徒のキャリアを潰したり、決して尊敬できる人物ではありません。

でもターの音楽への愛は本物なので、観客は彼女を憎みきれません。

そんなバランスは、ケイトだからこそ出せているのだと思います。

段々と、精神的に追い詰められたターの演技には鬼気迫るものがありました。

傷だらけの顔で、練習する鬼気迫るシーン・・・

段々と幻聴が聞こえるように・・・

(注意!ネタバレ含みます!)ラストシーンの意味

結局、ターは精神を病み、ベルリンフィルを除籍され、実家に戻ります。

その実家で、小さい頃集めていた有名指揮者のビデオを見て、

「音楽とは、言葉では表しきれない感情を表現できるもの」という、かつて自分を感動させた言葉にハッとさせられます。音楽への愛情を再び思い出したターは、アジアの小さな楽団で指揮を振るうことになります。

それがなんと、モンスターハンターいわゆるモンハンのゲーム音楽のコンサートでした。観客はみんなキャラクターのコスプレをしています。

かつては世界のクラシックの最高峰で指揮を奮っていた彼女が、こんな場末の会場でゲーム音楽の指揮者・・・

と、ここは憐れむ場面ではないのだそうです。

音楽への情熱を取り戻したター。その音楽をコスプレまでして熱心に聴く観客

現代の音楽には作家の意思がしっかりと理解でき、ターの顔もスッキリしているように見えます。

亡くなった過去の作家たちに思いを馳せ、想像しながら音の感情を探るのはロマンかもしれませんが、一歩間違うと狂気を生み出しかねません。

また天才も狂気と紙一重の危うさを秘めています。

そこに権力というものが介在すれば道を間違うこともあるかもしれませんよね。

ラストのターは純粋に音楽を楽しめたと良いのですが・・・。

何とも言えない後味の映画でした。

TAR/ター(字幕版)(Amazonプライムビデオ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました