どんなおはなし?
霊的な存在である天使の男が、サーカスの空中ブランコ乗りの人間の女性に恋をして、人間として地上に降り、死のある人生を選ぶというおはなし。
ヴィム・ヴェンダース監督の代表作
先日ヴィム・ベンダース監督の「パーフェクト・デイズ」に出演した役所広司さんがカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞に輝いたのも記憶に新しいですよね。
「パリ・テキサス」や「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」などの名作を撮っている監督は、大の親日家。
中でも小津安二郎への傾倒はよく知られていて、この「ベルリン・天使の詩」のラストシーンにも
「全てのかつての天使」のリストの中に小津安二郎の名前もあるほどです。
日本人として嬉しいですよね。
恋をする天使
もう、このシチュエーションだけで萌えますよね笑
ダミエルが恋するサーカスの空中ブランコ乗りマリオン。美しい上に、思考が詩的で魅力的な女性。
天使がオーバーコートのおじさまと言うのはとても渋いですが、言ってみればとにかく長生きしてるダミエルが人間界にやってきてワクワクソワソワしている様は可愛かったです。
道ゆく人に、ちょっとあれ何色?あっちは?」と聞きまくるダミエル。
天使たちには色は見えず、いつも白黒の世界なのですが、人間になるとカラーになって、血の気のある世界になるという演出も良かったです。
魅惑的な演者たち
ニック・ケイブがライブシーンで本人役で登場しますが、めちゃくちゃカッコいいです。
そしてなんといっても刑事コロンボ!こちらも本人役で登場し、ダミエルと交流します。最高の役どころで、目に深みがあって、常に書いているスケッチも素晴らしく、一気にピーター・フォークのファンになってしまいました。
交錯する人々の思考
作中ずっと、天使には、行き交う人々の思念が聞こえています。
時には天使は立ち止まり、耳を傾け、寄り添います。
悩んでいる人に寄り添った時、ふと「いや、今からでも大丈夫だ!」と気持ちが切り替わって立ち直るのを、なんともあったかく見守るダミエル。このブルーノ・ガンツの演技が素晴らしい!
また時には寄り添い虚しく、死を選んでしまった人間を悲痛な思いで見守るカシエルのオットー・ザンダーも素晴らしい。
私は初め、全てのセリフが素敵すぎて、字幕を追うのに必死だったのですが、この映画はそうゆうものでもないのかな。。。と本当に通りすがりの人の思考が流れる感じで見てみました。
普段、私たちが通りすがっている人間は、私にとってはいわば存在しない他人ですが、一瞬でも思考を拾うことによって、背景が生まれ、その人の人生の重みをずっしりと感じます。
そんな意図があるかどうかは定かではないですが、そんなふうに感じました。
ダミエルのような天使の存在や寄り添いを、第六感のような力で人間は感じ取っている、そんな映画です。
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