どんなおはなし?
うまく喋れることが出来ないが、歌を歌うと圧倒的な歌唱力のキリエ(アイナ・ジ・エンド)と名乗る路上アーティスト。
ある日、東京の路上で歌を歌っていると、故郷の先輩である真緒里(広瀬すず)と遭遇し、キリエのマネージャーをすることに。
東京ではイッコと名乗る真緒里は人脈を駆使しながら、キリエをプロデュースしていく。
しかし、ある日警察がやってきて、イッコの真実が明かされるのだが・・・
入り組んだ人間関係と過去のお話し
このキリエとイッコの友情関係には、複雑に絡んだ人間関係と、過去に起こったある出来事が深い影を落としています。
映画は過去と現在があちこちと飛び交い、なぜキリエはしゃべれないのか、イッコとは何者なのかが徐々に明らかに慣れていく仕組み。
キリスト教の思想や、東日本大震災も描かれ、美しい映像とは裏腹に重い作品となっています。
監督と脚本を手がけた、岩井俊二監督は
「自分の想像を越えた重たい十字架をこの子たちに背負わせることになった。彼らはこの世界を自らの足で歩き、懸命に、そして自由奔放に生きている。この空の下のどこかで。」
と語っています。
アイナ・ジ・エンドと広瀬すず
キリエ=路花(ルカ)を演じたアイナ・ジ・エンドは元BiSHのメンバー。その歌手力は折り紙つきで、どこと無く危なっかしい儚さもキリエにピッタリでした。
岩井監督は「ヴァイオリンとかチェロのような研ぎ澄まされていて、温かみのある声」とアイナの声を絶賛しています。
アイナ・ジ・エンドは、BiSHでも振り付けも担当していただけあり、この映画の中でも印象的なダンスを披露しています。
キリエの先輩で、マネージャーのイッコ=真緒里(マオリ)役は、広瀬すず。
イッコのときはカラーウィッグをつけていて、それはそれで可愛らしいですが、田舎で高校生だった時のノーメイクで制服の広瀬すずちゃんが本当に可愛い。すずちゃんは絶対に自然体がが一番輝いている、そんな女優さんですよね。
アイナは広瀬すずのことを「竜巻みたいな演技をする人で、周りを巻き込んでいくすごい人」と表現していました。
この2人がバディを組んで、アンバランスなようですがラストの海辺でのシーンや、雪に寝そべっているシーンは抜群の絵力でした。しかし、岩井監督は女の子を可愛く撮る天才ですね。
岩井監督はこれまでに「スワロウテイル」や「リリィシュシュのすべて」(両作とも大好きです!)など音楽映画を撮られていますが、監督は「音楽というのは人を勇気づけたりという要素もあるが、映画として音楽を映像化していくとどうしても暗い闇の部分が出て来てしまう。」とおっしゃっていましたが、今回の「キリエのうた」もまた、暗く重々しい題材を扱っています。
でもラストのキリエの歌う歌が、その暗さを全部飲み込んで少しの希望の光に昇華しているような、祈りにも似た感覚を覚えました。
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