どんなおはなし?
ある男が汽車に乗り、たまたま乗り合わせた見すぼらしい少女に、初めは嫌悪感を抱きながらも、少女のある行動に心洗われるという、芥川龍之介の短編小説。
いつ頃の作品?
書かれたのは1919年、芥川龍之介が27歳ごろの作品でこの前後には「蜘蛛の糸」や「杜子春」と言った傑作も生み出されノリに負っている時、でしょうか。
実際の芥川自身の体験をもとに書かれた・・・とwikiに載っていましたが、汽車で起こったほんの数分の何でもない出来事を、汽車が動き出す描写で動きを感じさせ、その少女の行動に、主人公と同じような怪訝な気持ちで注力してしまう文章力。
そして最後の締め括りまで、本当に見事な短編です。
好きな一文
汽車が発車する様子を描いた一文
徐に汽車は動き出した。一本づつ眼を区切っていくプラットフォオムの柱、置き忘れたような運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を言っている赤帽ーーそう云う全ては、窓に吹きつける煤煙の中に、未練がましく後ろへ倒れて行った。
見事じゃないですか?後ろへ倒れていくって・・・シビれます!
ラスト締めの一文
云いようのない疲労と倦怠とを、そうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅かに忘れることが出来たのである
物語の締めって本当に重要だなと思う一文です。素敵だ。
どこで読める?
芥川龍之介の『蜜柑』は青空文庫で無料で読めます!
私は本で持っていたいタイプでして、文庫本で購入しました。他の短編も入っていてお得です!
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