どんなおはなし?
自動車ディーラーのジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は、借金返済のため、自らの妻の偽装誘拐を計画する。
知り合いから紹介された怪しげな男2人組(スティーブ・ブシェミとピーター・ストーメア)を雇い、妻の裕福な実家から身代金をせしめ、山分けしようと提案する。
しかし、思わぬことで資金を調達できることになったジェリーは、偽装誘拐を断ろうとするが、2人組はすでに妻を誘拐し、しかも目撃者の人々を次々と殺害してしまっていた・・・
偽装誘拐は思わぬ展開を見せ、妊娠中の女警察署長マージ(フランシス・マクドーマンド)が捜査を開始する。
事態はどのような終息を見せるのか・・・
コーエン兄弟の出世作
今では超有名人であるジョエル・コーエンとイーサン・コーエンのコーエン兄弟。映画「ファーゴ」は兄弟の名を世に知らしめた出世作でもあります。批評家たちからの評価も高く、映画フリークにも絶賛されました。さらにアカデミー賞では7部門にノミネートされ、主演女優賞と脚本賞を受賞しています。
一気にブレイクしたコーエン兄弟はのちに「ノーカントリー」でアカデミー賞4冠(作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞)を受賞し兄弟の名を圧倒的なものとしました。
キャスティングのセンス
もうまず主役ジェリー役のウィリアム・H・メイシーの情けない夫感が最高です。奥さんを偽装誘拐するってことにまず愛情がないですし、ただただお金のことを考えている、そんな男です。息子のことだって「あ、そういえば!」的に思い出したようにケアしたり。
そして誘拐を請け負う2人組のスティーブ・ブシェミ(大好き)とピーター・ストーメアのコンビも最高。「犯人はどんな顔だった?」と聞かれると必ず「変な顔だった・・・とにかく変な顔」と言われるブシェミが笑えてしょうがない!本当はかっこいいのに!ストーメアの無口なサイコパス感も、ちょっと「ノーカントリー」にも通じる感じで怖かったです。ストーメアもことを目撃者が「マルボロマンに似てたわ・・・あ!そういえばタバコもマルボロだった!無意識でリンクしてるのかも・・・」と言っていて、そんなセリフも笑えました。コーエン兄弟のセンスよ!
事件を追う女署長のフランシス・マクドーマンドは主演女優賞を取っただけあり、素晴らしい演技でした。いつもニコニコハキハキ行動的で、ちゃんと考えてる?と思いきや、しっかりとした推理で事件を追っていく敏腕ぶり。なのに昔ちょっといいなと思っていた男性に会うときは嘘にまんまと引っかかったり、可愛らしい女性です。絵描きの旦那さんとの慎ましやかな生活ぶりがとても良かったです。
妊娠しているという設定も、大きいお腹を抱えて大変な捜査をするの、大丈夫なの???と思ってしまいますが、彼女の責任感の強さや天真爛漫さを視覚的に感じるという効果もありましたね。
コーエン兄弟のような、派手さはなく脚本で引っ張っていく作品には名優が欠かせないと思います。
センスが光るナイスなキャステヒングでした。
実話?じゃないよ
映画の冒頭に「実話をもとに」というテロップがあって、こんな事件、本当に起こったの???と思っていましたが、エンディングのラストで「フィクションです」と説明され、監督のユーモアを感じさせる演出がなされています。
この映画自体が、ウソから大事になっていく話で、映画の中でも色々な嘘が出てきます。
ラストで警察署長のマージが「わずかなお金のためになぜこんなことを。人生にはお金より大切なものがある。」と説くセリフがとても印象的です。
感想
実は食わず嫌いでコーエン兄弟の作品はあまり見ていなくて「ノーカントリー」「バートン・フィンク」以外は未見でした。「ファーゴ」の評価は知っていましたが、何度か途中で挫折した経験があります。
その頃のわたしよ、なぜだ!こんなにも傑作じゃないか!
いや、痺れましたね。
イメージ的にはクエンティン・タランティーノとウェス・アンダーソンを足して2で割ったような感覚で、切れ味が素晴らしかったです!
小説だったら芥川賞をあげたいくらいです笑
まだ未見の方はぜひぜひご覧になってみてください!
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