人生感が変わる「土を喰らう十二ヶ月」

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ひなぎくのほぼ日記

どんなおはなし?

田舎で自給自足しながら慎ましやかに生活する作家のツトム。妻には先立たれており、編集のマチ子とは恋人関係のようでもある。

マチ子は、ツトムの亡くなった妻の後輩編集者という設定。歳の差があるマチ子の美味しそうな食べっぷりを、ツトムはいつも微笑ましげに眺めている。

幼い頃、禅寺で精進料理を作っていた経験があるツトムの料理や所作はなんとも粋であり品がある。

ツトムは「土を喰らう十二ヶ月」として新作の執筆を始める。

とにかく美味しそうな料理

原作は水上勉さんの「土を喰う日々 ーわが精進十二ヶ月ー」という本。

お料理が重要なこの映画のフードコーディネーターとして、私も尊敬する料理家土井善晴先生が抜擢されました!

ツトムは京都の禅寺で精進料理を習っていたという設定。土井先生の楚々とした美しい料理が次々と登場する。

それを聞いてからは映画を観るのを楽しみにしていたのですが、期待を裏切らないその仕上がりに大満足です!

かまどで炊いたご飯、おこげも敢えて見せるし、野菜の根っこもそのまま調理するその姿勢が美しい。

お通夜での振る舞いはまるで「バベットの晩餐会」を思い起こす名シーンでした。

この胡麻豆腐を作るのにものすごい手間がかかっている。

沢田研二の最高傑作

主役の沢田研二が本当に素晴らしいです!キネマ旬報の主演男優賞に選ばれたのも納得の演技で、いつものような軽いノリもありながら、作家という立場から孤独や死と向き合うことを追求する姿勢の重みも持ち合わせ、深みある存在感を醸しだしていました。

外観は昔ながらの古民家ながら、内装はこのモダンな雰囲気・・・。上級者の住処である。

そこへ、恋人である松たか子がカラッと明るく、ご飯もモリモリ食べて愛らしい。その対比が見事なキャスティングでした。

マチ子が可愛い・・・「はいよ!」という返事も可愛いし、ご飯を本当に美味しそうに食べる、安心感のある女性。こーゆうオーラの女性になりたい。

ツトムの飼い犬さんしょ。めちゃくちゃいい演技してたのでタレントさんかと思ったが、近隣の一般ワンコと聞き驚愕!この映画の影の立役者でもあると思う。作中ではさんしょはツトムと一緒のご飯を食べている。おこげご飯も食べる。昔のわんこってそうでしたよね。

日々を生きる

心筋梗塞で倒れたツトムは、死を身近に感じます。

倒れる前はマチ子に「一緒に住もう」と言っていたツトムですが、考えを改めて孤独になって死について考察し、本を読み漁ります。

その姿に、「ツトムさん、私も知りたい!死への恐怖を克服する考えを!」とのめり込みました。

毎日、日々を一日と思って生きる。

先のことを考えるから億劫になる。

今日一日、無事過ごせればそれでいい。

よく聞くような言葉ですが、映画の中のツトム=沢田研二が言うとスっと心に入りました。

人生観の変わるような、素晴らしい映画でした!

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