どんなおはなし?
妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)の子供をしばらく預かることになったジョニー(ホアキン・フェニックス)。
少し変わった9歳の甥っ子ジェシー(ウディ・ノーマン)を前にして、関わり合い方がわからず何度も衝突するのだが、数週間をともにするうちに段々と絆を深めていく・・・
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マイク・ミルズ監督の最新作!
「サム・サッカー」「20センチュリー・ウーマン」「人生はビギナーズ」など、『一風変わっているけれど、繊細で優しい家族』を描かせたら天下一品のマイク・ミルズ監督。
今作はまた一層ミニマムに研ぎ澄まされていたように感じました。
監督はグラフィックデザイナーでもあり、どこをとってもアーティスティックなモノクロ映画に仕上がっていて流石のスタイリッシュさ。カルチャーにも深い造詣があり、使われている曲や、引用される本の文章など、全てメモりたくなる奥深さがありました。
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配役がとにかく素晴らしい
なんといってもホアキン・フェニックスでしょう!「ジョーカー」の時と同じ人物とは思えない!体型もそうですが、何より暖かい眼差しや仕草、繊細であり強さも兼ね備えた役で映画に真実味を与えていました。
そして、驚きの子役ウディ・ノーマン君!なんですか、あの子、あの表情や動きがとても演技とは思えず素晴らしかったです。
お母さん役のギャビー・ホフマンも繊細で強い母親役が素晴らしかったですね。
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ホアキンとともに子供を理解していく
距離を置いていた妹の子供ジェシーを預かるのですが、とにかく変わっており、最初は「どーやって接したらいいの?2人だけなんて無理!」と視聴者はホアキンと一緒に悩むことになります。空想めいた言動や、突飛な行動に疲れ果てます。しかしホアキンは諦めません!母親のヴィヴに接し方を聞き、根気強く、時には失敗してぶつかり合いながらも、ジェシーと向き合っていきます。
そうしているうちに、視聴者も段々とジェシーのことを理解し始め、最後には「君の独特な考えを全部知りたいと思う」とホアキンが言う通りの感情を抱くことでしょう。
その中で「母親について」の本を読むシーンがあって。母親というのは子供に対しての重責を当たり前のように負わされ、そして負いすぎているというような内容で、ジェシーの母親ヴィヴに対して肯定するようなシナジーがありました。
ファッションはいつも見どころいっぱい
マイク・ミルズ監督はファッションも見どころの一つ。
いつもシンプルで定番なファッションをどこか着崩し、服が自然で生活感がある。
監督はファッションのこだわりについて
〝故意的な堅さ〟がありながら、〝シンプルでフラット〟。もしくは、〝おかしな淡泊さ〟、〝堕落した簡素さ〟
だとおっしゃっています。よくわかんないけど、なんかわかる。笑
そしてホアキンはヴィーガンなので、革とかウールとか動物性素材のお洋服は着ないのだそう。そこまでするのは徹底的なヴィーガンなのでしょう。ホアキン優しいんですね。
子供たちへのインタビューシーンは実際のドキュメンタリー
監督は子供たちへのインタビューについて、「驚くほど隠さず心の内を教えてくれる」とおっしゃっていましたが、実に興味深いものでした。
子供の思っていることは、大人にハッとするようなことをきづかせてくれます。
忘れていた思いや純粋な優しい心、かと思えば大人顔負けの責任感を負った子供達。全て聞き逃したくないインタビューでした。
家族という他人、分かり合えないながらも肯定して受け入れ先へ進む
家族といえども1人の人間として、全てをわかりあうことは困難です。
また、関係性が長くなると会話不足で表面的になりがちと言う問題提起もあり、この映画では兄妹のそういった関係性に、甥っ子のジェシーが関わることで会話を復活してお互いに理解を深めるといった工程も感慨深かったです、
「どの家族にも壊れた部分はある」と監督の言う通り、監督の作品には問題を抱えた家族が登場しますが、普通なんてありえない、壊れていて当たり前、そのままの家族を肯定し受け入れる、「懐の深さとこの世界の優しさ」を作品を通して感じました。
「この世界には思っていないことが起きる、それでも前進むしかない、先へ、先へ(カモン・カモン)」ジェシーの台詞が印象的でした。
映画自体は最初退屈に感じるかもしれません。
でも段々と見るものを掴んで離さない、そんな魅力がこの映画には宿っています。
素晴らしい映画でした。
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