『菊次郎の夏』夏のうちにみたい、北野武の傑作映画

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どんなおはなし?

父を早くに亡くし、母は自分のために出稼ぎに行っていると言われ、祖母と2人で暮らしている少年が、ある日、箪笥から母親の住所が書かれているメモを発見し、家を飛び出す。

途中、不良に絡まれているところを、近所の奥さん(岸本佳代子)に助けられ事情を話す。

東京から愛知県の豊橋までという、到底子供一人では辿り着けそうもない距離に、奥さんはフラフラしていたヤクザな主人(北野武)をお供につける。

その主人というのが、本当にどうしようもない男で、少年を連れて競輪に行ったり、旅館のフロントにケチをつけてまけろと言ったり、ついには奥さんにもらったお金もなくなって、ヒッチハイクする車をパンクさせようとしたり。。。

やっとの思いで辿り着いた豊橋で、少年と男のみたものとは。。。

カンヌで10分間もスタンディングオベーションが起こった北野武監督の傑作

バイオレンスのイメージが色こい北野武監督ですが、この『菊次郎の夏』ではそんな要素はありません。強いて言えば、北野武演じる男の口が悪いくらい笑 常に「このやろー、ばかやろー、殺すぞ」と言ってます。

でも空気を吐くが如く、軽い言葉で、それによってこの男の印象が悪くなることもありません。

それは、なんと言っても北野武が演じているからであって、北野武じゃなければ、あの言葉遣いも、ヤクザな振る舞いも、ギャグ要素も、どすベリしたでしょう!

監督はこの映画で、「照れ」という要素について触れていました。

男は少年に、だんだんと同情を覚えたり、可愛く思えたり、勇気づけてあげたいと思ったり、笑わせたいと思ったり、しますがどうも照れが勝ち、上手くできない様子が、監督が演じるととても説得力があります。

そして子役について、

「初めはなんという印象もないけれど、見て行くうちにだんだん可愛く思えるような子」と語っていますが、本当に、見終わる頃にはこの少年のことがとても可愛く見えて、全観客がこの子のことを大好きに、そして応援したくなる気持ちになったと思います。

派手さはない映画ですが、カンヌ映画祭で、観客が10分間もスタンディングオベーションをしたというのも頷ける傑作映画だったと思います。

演出や音楽のこと

まずオープニングから最高です。間違えばB級感の出そうな演出ですが、監督の絶妙のセンスと、久石譲さんの神がかった音楽で、冒頭から既に泣きそうになります。

そして「間」も絶妙でした!

私は「間」の長い映画はあまり好きではありません。北野監督も長いです。が、それがストレスにならないんですね。

歩くシーンが長いのも、この後何を言うんだろうか。どういう行動に出るんだろうか。そんなことを考える心の余白となっていて、長さもパーフェクトなんです。

そしてお笑い。たけし軍団も登場してとにかくアホなお笑いを繰り広げます。監督曰く「映画で高尚な笑いをやっても仕方ない。映画に馴染む程度のレベルの笑いにしている」とのこと。

その笑いは少年のレベルに合わせ、少年に起こった悲しいことへの上書きをするかのように、まるで柄杓に笑いを注いでいくかのように、繰り広げられ、少年も観客も救われます。

夢の演出も、ともすればチープになってしまいそうなところ、ほどが良くて印象に残りました。

ラストも素晴らしいです。

ありきたりのテーマなのに、こんなに馬鹿げていたのに、北野武のセンスと、神音楽によって最後は号泣しながらの拍手!

夏のうちに、『菊次郎の夏』をぜひ見てみてくださいね!

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